morita MiW

『爪みたいな月の夜』

細い足のあの驢馬は
いつもの夜を歩いていきました。
ポクリヨロリポクリヨロリと
おぼつかない足取りではありました。

大きくて重い荷物はなんでしょう?
心配と失望と退屈と。
朗らかさや希望、それに楽しさに
いつか交換するつもりなのかもしれません。
どこで?

空には。
白い爪みたいな月がいて
ただただ驢馬を眺めておりました。
月以外は誰もいない、暗い暗い夜でした。